OKINAWA.(オキナワドット)シリーズのリリースに寄せて

これからのこと

これまでの10年は、「沖縄から」「沖縄で」を意識しないモノづくりだった

私たちは、沖縄県、読谷村にある小さなお店から手作りのオーダー家具を10年間制作、販売してきました。お店を始めた頃は、まだSNSもない時代、インターネットで家具をオーダーするということ自体も、まだ珍しいことだったように思いますが、知名度のない私たちは、とにかくこの小さな店を全国の方に見つけていただくために積極的にインターネットを活用しました。その中で重要だったのは、「沖縄から」を印象づけるということよりは、むしろ都市部などの家具店から購入するのと同じような感覚で選んでいただけるように、オーダー家具のメリットをしっかりと伝え、距離を超えたオーダーのやりとりにより生じるストレスをなるべく減らすように工夫することでした。

そういった意味では「沖縄から」を感じさせることとは逆の発想だったと言えるかもしれません。

10年間で感じてきた、モノづくりや消費の在り方の変化

現在では、家具をインターネットで購入するということはめずらしいことではなくなりました。それだけではなく、同一規格の大量生産/大量消費を前提とした家具がオンラインはもちろん、近所のショッピングセンターでも気軽に手に入れられるようになりました。

それは家具だけではなく、身の回りのものすべてが同じです。気軽に、そこそこ良いものが簡単に手に入る。

とても便利になった反面、私たちは購入時にそのモノが誰がどこで作ったものなのかをますます意識しないようになりました。自戒の意味も込めて、「気軽で簡単な消費」を無意識にするようになってきたように思います。

感じ始めた違和感

ただ、この「どこから来たのかよくわからないモノたち」を使うライフスタイルは、便利ではあるけれど、行きすぎると様々な問題を生じさせるということも知るようになりました。身近な、あるいは遠い国の環境問題、顔を合わせることもない作り手の労働に関する問題、気軽さ、簡単さのウラには、私たちが目を向けていないことがたくさんある。自分たちが作り手であることも手伝い、「このままで良いのかな?」という消費者としての違和感はどんどん大きくなっていきました。

私たちのこのライフスタイルの全てを、いっぺんに変えることは難しいかもしれない。でも、暮らしの中で、要所要所、「コレは誰がどうやって作ったものなのか」を意識する感覚を取り戻し、養っていきたい。

モノづくりをするものとして、こういう時代だからこそ、私たちのお客さんとも共感していきたい、そう考えるようになったのです。

再び、インターネットそしてSNSという希望

前述のように、インターネットは距離を超え、都市部でも地方部でも関係なく、人をつないでくれ、そのやりとりを気軽に、便利にしてくれました。それが当たり前になり、オンラインでの関わりがオフラインでのそれと同じように生活に溶け込んだ今では、無限に広がる関係性の中で、人と人とを強く結びつけるものは「共感」です。

どんなことを良いと思っているのか、どんなことを伝えたいと思っているのか、そうした価値観・世界観をより具体的に、丁寧に共有できるような世の中になってきました。

そんな今、Indigoがお客様と共有したい「生活の道具を選ぶ」価値観、世界観ってなんだろうということをしばらく考えていました。

世の中の課題に対して、それをいっぺんに変えるような大きなことは言えない。

でも、暮らしに寄り添う道具を作るものとして、その「モノづくり」を通して、大切にしたいことを伝えたい。

誰が、何を使って作っているのか、がわかっているモノ

とはいえ、Indigoのモノづくりの基本は変わりません。これまでも、これからも「顔の見える家具職人が、お客様ひとりひとりのご要望を受けて、一点ずつ手作りで作る家具」です。

それに加えて、今回新たにやってみようと思ったこと、それは、「沖縄の木」を使って、 「私たちが、今、届けたいと思うデザイン」で作り、お届けすること。

「沖縄の木」を使うことについては、ずっとなんらか挑戦したいこととしてありました。

ただ、提供コストの面、供給の安定性とを検討した際に、着手する意義を、私たち自身が見出し切れていなかったというのが正直なところです。

ただ、この価値観の時代、調達の裏側もしっかりと理解した「地元の材」を使い、提供することがお客様の体験としても意味のあることなのではないかと思えるようになりました。

また、「沖縄の木」を使って、それを生かしたデザインに私たち自身が納得できるものができたということもあります。これは本当に、亮さんのブレイクスルーでした。

これまでの家具作りを通して、暮らしの空間に馴染みがよく、存在感もあり、長く付き合える、そうしたデザインの要素をうまく材と組み合わせることが、今回できたのではないかと思います。

「OKINAWA.(オキナワドット)」はこれからのモノづくりについての価値観をお客様と一緒に育てていく“きっかけ”に

「何を使って、誰が作ったのか」をハッキリと前面に出したシリーズを提案するとともに、コロナ禍による暮らしの制限がもう少し落ち着いたら、沖縄の作り手さんとコラボレーションした催しものなどにも取り組んでいきたいなぁ、なんて思っています。

インターネット上だけで価値観・世界観を伝えるだけでなく、興味を持ってくださったお客様と直接出会う場でも対話ができるしかけを作っていけたら良いのですが。

商品の提案や、活動を通じて、私たちが今回表現したいと思っていることをお客様に聞いていただき、感じたことを返していただく対話の中で、一緒に価値観・世界観を育て、広げていけたらと思っているのです。

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